昭和55年7月といえば1980年、今から35年前のこと、初めてのガンダムのプラモデルが世に出ました。
当時300円で発売されたガンプラ(もちろん当時そんな言い方はしていませんが)は、先行してクローバーというメーカーが出していたおもちゃおもちゃ然としていたものに比べ、非常に良くできており、男の子はすぐに夢中になったものです。
それからガンダム3部作の映画が上映され、どこへ行ってもプラモデルが手に入らないという社会現象にまでなったガンダムのプラモデル、その開発秘話がこの本です。
既にクローバーというメーカーが取得していた版権がある中でどのようにバンダイが版権を取得したのか、なぜ1/144なのか、当時のバイダイ模型の仕事のありようとともに当事者の口から語られます。この本を読むとガンプラにおけるイノベーションがよくわかります。
一番最初のガンプラ企画に携わった松本氏は、元はイマイ模型の出身です。
イマイ模型といえばあのサンダーバードシリーズのプラモデルを出していたところです。
イマイが倒産してバンダイに入社した松本氏は宇宙戦艦ヤマトも手がけています。
そういった土壌があってのガンプラだったんですね。
ガンプラが斬新だったのは、当時のキャラクターもののプラモデルにあって、
①1/144、1/100などの統一スケールになっていること
②主人公だけでなく、敵のメカも製品化したこと
です。
猛烈な残業残業の毎日で、今であれば労基署に訴えられるかもしれない状況でしたが、そういった中だからこそ,こだわりや俺たちのガンダムという想いが培われていきます。
今とは真逆の、
チーム制でなく、何から何まで一人体制でやることで、責任も明確になるし無駄な打ち合わせもなく効率的。たしかに相当な仕事量になるがそれを自分の血肉化する努力をすることで「プロの仕事人」となる。
当時のバンダイ模型には利益が出たら皆に還元するという精神があった。トップはその都度、判断しながら采配を古い、やればやっただけの報酬を与えていた。現在では、ひとつの制度の枠に囲まれてしまって、独自の判断ができなくなっている。
30年前の中小企業の論理だと片付けるのは簡単なことですが、本当に今の大企業の組織運営が正しいのかどうかははなはだ疑問だと思います。
ガンプラが一大ブームを起こした後も、さまざまな手を打っていきます。
本編に出てこないモビルスーツを独自にプラモ化したMSV(モビルスーツ・バリエーション)シリーズや、子供向けにディフォルメ化したSDガンダムシリーズなど、プロダクト自身を深化させたり、切り口を変えて新市場を開拓したりしていきます。
表題のなぜガンプラは1/144なのか?
それはミリタリーモノの世界で1/144が国際スケールであったこと。ガンダムにミリタリー色を強く感じ、リアルさを追求したかったからだそうです。
最後にとても印象的な、これがイノベーションの源泉かもと思わせる言葉をご紹介します。
ブームになってしまったら、後は誰でも続きことができる。
パターン化されて、50点、100点も次から次へと作ることができる。
シリーズの追加商品は誰にでも出せるが、最初の一歩は商品に夢を託す人間の情熱が創るのだ。
あらためて、ガンプラ、作りたくなりました。