ダニエル・ピンク 人を動かす、新たな3原則」①


コーチングに通じる、「視点取得」を心がけろ!

セールス、営業、この言葉にいいイメージは少ない。
用もないのに飛び込みでやってくる屋根の修理や床下点検。
また僕自身の銀行員時代の経験として、すでに何枚もクレジットカードを持っている顧客にさらにもう1枚と進めたり、ボーナス時期の定期預金のお願いを自宅訪問やテレセールスでやっていたこと。
顧客が特段必要としていないものをいかに売るか、門前払いばかりで自尊心が傷ついたり、それが営業のイメージでした。
もう営業は苦手でした。
でも、顧客開拓、マーケティングのためには営業はさけては通れません。困ってしまいます。

最近、営業に関する本を何冊も読んでいます。
神田昌典先生の「非常識な成功法則」の中にでてくる”トノサマバッタの営業”や、石原明先生の「営業マンは断ることを覚えなさい」の4ステップマーケティングなどは従来の営業の概念を変える本でした。
そして本書ダニエル・ピンクの「人を動かす、新たな3原則」、副題の”売らないセールスで、誰もが成功する!”という神田昌典先生らしいキャッチに惹かれて手に取ったものです。

仕事をするにあたって”モノを売る”だけでなく”人に動いてもらう、理解してもらう”ことなしには仕事が進みません。
それらを含めてセールスと定義し、従来のイケイケ飛び込みセールスとは違う、現代のあるべきセールス方法が語られています。今までみたいに不効率な精神を病む営業スタイルを行わなくていいと書かれています。

セールスに必要な特質として新たな3原則、同調(Attunement)、浮揚力(Buoyancy)、明確性(Clarity)が紹介されています。

・同調(Attunement)
これは相手の頭の中に自分を入れること、相手の立場に立つこと、キーワードは”視点取得”です。
考え方が面白いのは、”相手を自分の中に受け入れる”のではなく、”相手の頭の中に自分が入る”という考えです。似ているようですが逆なんですよね。
”相手の頭の中に自分が入る”=“相手の視点を取得する”には、予め自分が相手より低い立場にいると想定して接すること、戦略的に相手を模写(動きも)することで、共感を得ることで可能になります。
視点取得はコーチングの手法にすごく似ており、ここでも攻め、競争といった概念でなく、協調、協働の概念といった感じになります。

・浮揚力(Buoyancy)
ここでも面白い考えが出てきます。
「私はできる!」といった断言的に自分に言い聞かせるよりも、「私はできるかな?」といった疑問文形式の方が、はるかに効果的だという事実です。
疑問文形式で自問自答することで、自発的・内発的に答えを導き出す役目を果たすそうです。どうやればできるかを考えることで、行動選択の幅が広がったり、目標追求の理由をより深く考えるようになり、よりこれから行う行動の質、パフォーマンスをあげる役目を果たします。
またポジティブ思考とはいえ、ポジティブであることだけがいいことではなく、ポジ:ネガ=3:1の状態が最高のパフォーマンスを発揮するそうです。

・明確性(Clarity)
より明確により効果的に相手に伝えるための7つの効果的なフレームが紹介されています。
7つの内、対比(何かと対比して伝える)、出口ランプ(依頼だけでなく、その具体的な実行方法も提示する)、可能性(達成よりも不確実な方が魅力的)、傷(いいことばかりでなく、ちょっとだけデメリットも伝える)の4つはとても効果のある手法だと感じます。

これら3つのセールスに必要な特質は、無理矢理売り込むための特質ではなく、コーチング的な行動、考えを伴っていると感じます。特に同調に出てくる”視点取得”はコーチングスキルそのものです。

次回は、より具体的なセールスに必要な実践的な”スキル”について解説します。

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