音で音が消える!?

中村:
現在マイクロネット様が注力しておられる技術開発についてお聞かせ願えますか?

浜社長:
現在当社が力を入れているのがANCというものです。
ANCとはActive Noise Control(アクティブノイズコントロール)の略でした、簡単に言えば音で音を消す技術になります。
音は波形です。騒音となっている音の波形と逆の波形を出してぶつけることで波が打ち消し合うことが原理です。
水面で両岸から波を起こして、波がぶつかって消えることありますよね、あれと同じです。
専門的には、騒音と逆位相の波をぶつけて音を消す仕組みになります。

anc_1● ANCの原理

中村:
音で音が消えるのですか。
ホームページを拝見しますと会社設立当時からANCには取り組まれていますね。

浜社長:
はい、そう、もう20年近くになります。
1993年に、自動車メーカーから車のエアーフィルターの吸気音を小さくできないかと相談がありました。
通常はエアーフィルターの前にレゾネーターと呼ばれる空気室を設けて吸気音を小さくします。
それをANCを用いて小さくできないかということでした。まぁできるだろうと思って「できます!」って返事しちゃったんですよ。

中村:
え(笑)大丈夫だったのですか。

浜社長:
試作に1年くらいかかりました。
2mくらいの塩ビのパイプを買ってきて、片方に騒音もう片方に騒音を消す音を出すANCを設置して実験をおこないました。
そうしたら逆に音が大きくなったんですよ。
逆位相の波をぶつけているのにですよ。

中村:
どうしてなのですか?

浜社長:
もうわかりませんでした。
1~2週間悩みになやみました。そしてやっとわかったのが、ミリセカンドレベルでの遅れだったのです。
音は1ミリセカンドで約34cm進みます。
ANCの回路から電気信号が流れて逆位相の音を出す回路までいくのですが、そこに遅れがあったんです。
電気回路で入り口から信号入れたら出口からすぐに信号が出るって思っていました。
まさかそこに遅れが生じているなんて思いもつきませんでした。
でも電気信号も入力して出力するまでに遅れがあったのです。
その遅れのせいで逆位相の波がずれて音がかえって大きくなっていたのです。
もうこれを解決したときは、「やったぁ~!」って感じですよ。
ず~と悩んでいたものが解決した瞬間、もう技術者としての喜びですよね。
今は社長をやっていますので、目先のお金も大事なのですが、やはり技術者として難題を達成したときの喜び、これはお金とは比較できません。
この達成感を社員にも味わってもらいたいですね。

中村:
そうですね。上手くできなかったコトを解決したときの喜び、それが人を成長させるきっかけにもなります。
20年来取り組んでおられるANCの現在はいかがなものでしょうか。

浜社長:
2002年にANC評価装置を開発しまして、2005年に東京工科大学へ納入しました。
現在、展示会などに出展しているのですが、さまざまな業種の方からお声をかけていただいています。
プレス工場などではプレス音が大きいため、そこで働く工員さんの頭上にANCを置くことで騒音を抑制したり、プロジェクターのファンの音を小さくしたり、パチンコ屋さんでの利用など、音で困られている会社がたくさんあることがわかりました。
しかしながらANCは理論的には確立しているのですが、なかなか実用化まではいたりませんでした。
当社では国の助成金をいただきANCのコアとなるデジタル信号処理などの研究開発を進めています。

anc_system● ANC評価装置

打てば響く会社にしたい

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中村:
中小企業が研究開発するにあたって助成金の活用は大切です。
どのように研究開発されているのですか?

浜社長:
研究開発は、川崎の本社とここ塩尻、そして北海道の室蘭の3拠点で進めています。

中村:
どうして遠い北海道なのですか。

浜社長:
ホームページの会社案内に「打てば響く会社にしていきたい」と掲載しているのですが、室蘭の技術者は当社の卒業生なのです。
博士号を持って当社に入社して働いてもらっていたのですが、再び大学で研究したいということで一度退社して研究生活に戻りました。
研究が一段落して、そして再び一緒にやろうということになりました。
室蘭からSOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)という形で働いてもらっています。
彼にはANCの理論的な部分を詰めてもらっています。
毎週Skype(スカイプ)で3拠点ミーティングを行って開発を進めています。理論を確立し、その理論を補完し、実用化を目指しています。

中村:
出戻りってことですか。すごくオープンな会社なのですね。

浜社長:
辞めてさよならではありません。
当社を卒業してもパートナーとして一緒に働いていただいている方もいます。
当社出身なのでやり方や考え方がわかっており、仕事が進めやすい面もあります。

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