温故知新

温故知新ITの世界に限らず、ビジネスの世界でも流行廃りがあって毎年キャッチなコピーを題した本が話題になります。
僕もタイトルに釣られて購入するのですが、これまで無かったような斬新な内容というよりも従来の理論やフレームワークを新しい視点で捉え直したり言い方を変えたものも多い感じです。

焼き直しといえば悪い感じですが、言い方を変えるとはすごく大事なことです。言葉を再定義することで、認識が変わり新しい命が吹き込まれます。また現代の状況に合うように視点を変えることは、他業界で当たり前だったことを自分の業界に持ってくて変革を起こすきっかけになります。
一昨年流行った「リーン・スタートアップ」はトヨタの「5S」を工場から起業に適用を変えたものです。

ビジネス系の古典、原点というとたいていはドラッカーが出てきます。
ドラッカーの「マネジメント」を読んだことのある方はわかると思いますが、今読んでもまた今読むからこそ示唆に富んだ考えに驚かされます。

今年に入ってふと思い立って、宮本武蔵の「五輪の書」を読みました。
宮本武蔵と言えば誰もが知ってる剣豪ですが、ほとんどの人は巌流島の決闘までの話で終わっていませんか?
いろんな武蔵の映画やドラマのクライマックスは巌流島。小次郎を倒して小舟で帰るシーンで終わっています。しかし巌流島の決闘は武蔵がまだ30歳のころの話です。「五輪の書」は武蔵が60歳を越え死ぬ寸前に書いたものです。
それからの武蔵の物語があっての「五輪の書」です。

「五輪の書」は兵法の書です。戦うにあたっての身の振る舞いが事細かに書かれてあります。が、ただの戦うためのハウツウ本ではなく、物の見方、とらえ方、異常時の心のあり方など、哲学的な内容がたくさん書かれてあり、ビジネスを行う上でとても有益な内容です。
例えば、
「遠きところを近くに見て、近くを遠くに見る事、兵法の専、也」
「わが弱点を改めようとして、細部にこだわり、小手先の器用さに頼ってはいけない」
など、まさにその通り!
目先の変化にとらわれず、大きな流れを見ること。本質を極めること。
どれもビジネスの基本じゃないですか。

また最近読み終えた新渡戸稲造の「武士道」も大変示唆に富むものでした。
日本人の道徳観、ものの考え方や価値観の原点を武士道を通して考察していきます。
この本を読むと、高度成長期の日本を支えた労働者の勤勉さ、会社への忠義心の元がここから来てるのか!と気づかされます。

古い本は表現が素直で、変な装飾や飾り言葉が無く素直に論旨が伝わってきます。
今では忘れ去られた日本人の美徳、「礼」や「義」などは今の時代だからこそ必要なものだと感じます。目の前の変化にただついて行くだけ、自分さえよければいいといった考えに蔓延してしまっている社会だからこそ、原点回帰が必要に思います。

「故きを温ねて新しきを知る」。まさにその言葉通りの体験でした。

現代語訳になっているので読みやすくなっています。みなさんも一度、古い本を読み返してみてはいかがでしょうか?

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