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公共的活動におけるプロボノとは

長野県みらい基金の「キャリアを生かした市民活動応援事業」委員公募に提出した小論文になります。
提出は800字でしたが、原文はこのように2400字と大幅オーバーなっています。

公共的活動におけるプロボノとは(フルバージョン)

2015/03/17 中村剣

Ⅰ.序論

近年ボランティアや市民活動などの公共的活動が活発化してきている。
その背景には、バブル崩壊後の長引く不況から行政だけでのサービス提供の限界と、価値観の多様化により求められるサービスが多岐にわたってきていることがある。これまでの行政の最大公約数的サービスだけでは賄いきれない部分をNPOや市民活動団体などが担いだしている。
本稿では、公共的活動におけるプロボノを、①支援を受ける団体側と②プロボノに参加する個人側の2面から筆者の体験を交えて考察していくことで、これからのプロボノの役割や意義について考察する。

Ⅱ.本論

■プロボノの現状
筆者が”プロボノ”という言葉を初めて耳にしたのは5年以上前である。2013年にプロボノ普及のための市民団体「プロボノグループ パレット」を設立し活動を行っているが、”プロボノ”という言葉自体の認知度は依然低いままと感じている。
東京等ではプロボノ団体が複数存在するが、ここ長野においては最近になってNPO等を支援する中間支援組織がでてきてはいるが、一般の人々のプロボノへの認識はほとんどないといえる。

■支援を受ける団体側からみたプロボノ
筆者が在住する塩尻市は市民交流センターえんぱーくを中心にボランティアや市民活動が盛んである。筆者もいくつかの団体に参加して活動しているが、参加者の多くは定年後のシルバー世代と子育てママが占めており、30~40代の現役層の参加はとても少ないものになっている。
公共活動を行っている各団体は、その理念やビジョンはすばらしいものであるが、組織としての団体運営、会議のやり方、行政への申請書作成、会計などの事務処理、ホームページ作成などについてのビジネススキルは不足しており、手が回っていない状況である。そのため、せっかく掲げた理念を十二分に行えていない。
これら団体にビジネススキルを持った専門家がアドバイスに入ることでより効果的な公共活動の実現が期待できる。

■公共活動に参加する個人側からみたプロボノ
従来ボランティア活動というとゴミ拾いに代表される清掃活動など、参加する個人のスキルとは関係のないものが多いイメージであった。いわゆる慈善活動、奉仕活動であり、無給で行うのが当たり前というものである。
しかしながらここ数年、働き方に対する考え方も多様化してきており、所属する企業だけでなく、広く社会に自分の持つスキルを使って貢献したいと考える人たちも増えてきている。
ドラッカーが提唱する「パラレル・キャリア」に代表されるように、単一の組織だけで自己実現を達成することは難しく、また企業も永続的に雇用を保障する時代ではなくなってきており、現在所属している企業以外で、個人のスキルを磨くことは社会貢献だけでなく、個人のリスク管理上でも重要と言える。
しかしながら、個人の持つスキルの棚卸し、可視化を行わないと、支援を受けたい団体とのマッチングが難しいことは課題である。

■事例1 Googleイノベーション東北
筆者は2014年4月から、Googleが運営している「イノベーション東北」(https://www.innovationtohoku.com/)に参加し、岩手県釜石市の釜石観光物産協会のホームページリニューアルに取り組んでいる。
イノベーション東北とは震災を機に新しい挑戦に取り組もうとしている東北各地の事業者と、それをサポートしたい方々とをつなぐクラウドマッチングプラットフォームであり、全国からサポーターとしてデザイナーや士業含め300名以上の人々が参加している。イノベーション東北では支援を受ける団体のニーズをホームページで公開し、サポーターとのスキルのマッチングを行っている。
釜石観光物産協会の担当者からは震災後、手つかずになっているホームページを新しくして観光客を招きたい、しかし、自分たちにはネットの知識も少なく困っているとのことだった。塩尻、東京、釜石の3拠点で、メールやテレビ会議を通じて企画を進め、ホームページを構築を行った。2014年夏には現地釜石を訪問し、これまでネットでしかお会いしてなかった現地のみなさんと交流を深めることもできた。
この経験は、釜石観光物産協会にとっては、日本国中から専門家の支援を受けることができたこと、筆者には企業内の日常業務では得られない充実感と満足感を与えた。

■事例2 プロボノグループでの市民活動デビュー
プロボノグループ パレットでは月例のセミナーを開催している。このセミナーは30~40代の現役層を狙ったものである。ここに参加してくる人からは、「市民活動に興味があるがこれまで参加できなかった」や、「このまま会社生活だけでいいのか悩んでいる」などの声を聞くことができた。
平日の日中中心のこれまでの市民活動では参加しようにも参加できなかった層向けに機会を提供することで、徐々にではあるが現役層の市民活動への参加を促すことができてきている。
こうした参加者の中から3名の方が自らがセミナー講師として人前で話すことにデビューを果たした。会社内でのプレゼンテーションと違い、一般市民を相手に話すことはデビューした3名誰もが新鮮な経験をしたと語っている。

Ⅲ.結論

本論で述べたように、支援を受ける団体側と支援に参加する個人側ともにニーズがあることがわかる。課題としては、①支援を受ける団体側の課題の明確化、②支援に参加する個人側のスキルの棚卸し、③双方をマッチングさせる仕組みの構築、があげられる。
これら3点は一言で言えば”マーケティング”であり、支援して欲しい側とスキルあるプロボノとのお見合いをいかにスムースに行うか、である。
例えば、長野県ではすでに中小企業振興センターが行っている専門家派遣事業(http://www.icon-nagano.or.jp/cms/modules/contents/page/00017.html)があり、事例1で紹介したGoogleイノベーション東北などを参考に、マッチングの仕組みの構築が可能である。
支援を受ける団体とのスムースなマッチングを実現することで、プロボノは長野県の公共的活動の推進加速に加え、プロボノに参加する個人に幸せを与えることが期待できる。