ちえてらすコンサルティング

技術者の夢舞台 株式会社サイベックコーポレーション(1)

会社概要

株式会社サイベックコーポレーション
業種:金属加工業
所在地    [本社・工場]
〒399-0704 長野県塩尻市広丘郷原南原1000-15
電話:0263-51-1800(代表)
FAX: 0263-51-1808(代表)
http://www.syvec.co.jp/

売上高以上の投資で作った夢工場

中村:
日経ものづくり「強い工場アワード」大賞、おめでとうございます。
まずはなんといってもその夢工場についてお聞かせください。
売上げ20億円に対してその9割の18億円の投資とはすごいですね。

平林社長:
ありがとうございます。
実はあの投資額は間違っているんですよ。実は28億円、売上高の9割なんかじゃなくて1.4倍なんです。

中村:
9割でも多いのに売上げ以上とはすごい投資ですよね。社内への説明とかはどうなされたんですか?

平林社長:
夢工場については、その投資金額よりも、これから自分たちが何をやっていくのかを中心に話し合いました。
現在の工場は前経営者の父が残した夢舞台です。今後の私たちの新しい夢舞台が今回の投資なんです。
基本的なコンセプトは私が作り、あらかじめ社員に話しました。
そのコンセプトは、「ものづくりの楽園、ものづくりパラダイス」です。ものづくりの原点である楽しいものづくりを目指しました。
その上で、新しい若手のメンバーでどれだけのものをこれからやっていくのか、アイディアを出し合って社員みんなで作ったのが夢工場です。

中村:
とはいってもあの投資額は最初から回収可能との計算をされていたのですか?

平林社長:
はい、もちろんです。
夢工場は、私が社長に就任した2年後の2010年の後半くらいから構想に着手しました。
工作機械のヤマザキマザックの工場を設計した設計士さんと1年に亘り検討を行いました。
各種雑誌でも報道されていますが、地下工場にするメリットとして1年にわたって気温変化の少ない恒温環境を実現することができます。ここ塩尻は夏と冬の寒暖の差が40度近くあります。
それを20度に抑えることで空調の負荷を大きく削減することができます。
計算上半分になるんですね。設計士さんの計算によると11.4年での回収が可能とでました。
実際、毎月の電気料金を測定していますが、ほぼ計算通りで推移しています。
あとは、これから先、私たちがこの夢工場で何をやっていくかが大切です。

強みのCFP工法

中村:
サイベックさんの強みは、CFP工法(注1※)ですが、この技術確立までの経緯はどういったものですか?
1990年代に光ピックアップ(注2※)の製造を従来の焼結加工(注3※)からプレスに置き換えたのが始まりとお聞きしています。

平林社長:
CFP工法といってもその時代、その時代で違うんです。進化しています。
90年代の光ピックアップで使ったCFP工法はCFP工法の原点となるものですね。
90年代、電気関連から始まったCFP工法ですが、その後、プリンターのアマチュア(注4※)などにも応用していきました。
しかし、電気関連は急速な海外シフト、コモディティ化が進んでいきます。
そこで当社は自動車部品関連に目を付け、CFP工法も自動車用に近代化していきました。
当時、海外進出の打診も受けましたが弊社みたいに小さな企業は、海外進出するとなると国内工場との二足のわらじになりとてもやっていけません。高付加価値なものづくりは実現できません。
そこで、光ピックアップなどの電気系のCFP工法は現地企業に技術供与して、そこで得たライセンシーを自動車用の技術開発に投資していきました。

注1:CFP工法(Cold Forging Progressive:冷間鍛造順送プレス)
:金属素材を室温で、金型を用いて圧縮成型する技術。
通常は昔の刀鍛冶のように金属を高温に熱してから処理を行う。
注2:CDやDVDなどの光学ドライブでデータの読み書きを行うためのレーザー部品。
注3:材料の粉末に圧力を加えながら溶け出すよりも低温で加熱して一体化する加工技術。
注4:モーター部品の回転する部分。

中村:
なるほど、一般的になりコストに合わなくなった技術は海外企業に供与し、それで得た資金を新規事業に生かされたんですね。
そもそもなぜ、自動車業界だったんですか?

平林社長:
自動車部品も少なからずやってはいたのですが、売上高の2割はいっていませんでした。
きっかけは、先代社長が行ったCFP工法についての講演を某自動車部品メーカーのトップの方がお聞きになられたことです。
先代社長とその方が意気投合し、ぜひCFP工法を自動車でも使いたいという強いオファーでお取り引きが始まりました。
某メーカーさんとお取り引きをするということは、その先に大手自動車メーカーへの展開が待っており、急速に自動車関連部品にシフトしていきました。
今では自動車関連部品が売上げの8割を占めるまでになっています。

イノベーションを起こす環境づくり

中村:
CFP工法の強みを維持していくための取り組みについてお聞かせください。

平林社長:
電気系でやっていた原点であるCFP工法と今の自動車でやっているCFP工法とでは、その作る部品の大きさが全然違います。
小さな部品を精度よく作ることは割合容易ですが、大きな部品を高精度で作ることはとても困難です。
そのためには、イノベーションが必要で、イノベーションには人が最重要です。
しかし、人だけではイノベーションは起こしにくく、イノベーションを起こしやすい環境づくりが大事になってきます。
そのためには、何と言っても人材育成が必要ですし、自分たちだけでなくお客様の声をヒントにしないといけません。
人材育成については、如何に若いうちに経験を積ませるかだと思っています。
1つの取り組みとしては、2010年からやっています、「ものづくり未来塾」があります。
「ものづくり未来塾」は、創業者が講師になってものづくりの原理原則を若手社員に教えることで技術の継承をはかっています。
もう1つは、イノベーションをどう起こさせるかということです。
イノベーションは、人から生まれるもので、夢やロマンがないと生まれませんし、お客様からのヒントや社員自身が新しいものにチャレンジしていかないと生まれてきません。それは日常業務だけでは難しいものです。
そこで、「職務開発制度」というものを設けています。社員がやりたいことを形にするきっかけを与える制度です。
基本的な技術の方向性は私が示しますが、それにさえ合っていれば予算をとって日常業務とは別に自由に取り組んでもらいます。そのための残業代も会社が出します。
日常業務に余裕があればその時間にあてても構いません。考えるだけでなく、アクションを起こす場を与えることです。
昔のうちの会社はひどかったんです。失敗だらけでした。失敗したのを自分でなんとか見繕ってばれないようにしたりしていました。
しかし残念ながら、今は失敗ができない環境です。それだけ改善が進み、会社としては良いのですが、それでは反対にイノベーションが起きにくい環境になっています。
「職務開発制度」は自分からやると手を挙げてやっている研究です。社員は死にものぐるいで取り組みます。
例えうまくいかなくともその経験から学ぶ教訓をどう生かし成長していくか、とても大切な機会だと思います。
問題解決型の人材の育成、それが1番の狙いです。

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