クリステンセンが再発見したイノベーションの本質

ハーバード・ビジネス・レビュー6月号に掲載されている”クリステンセンが再発見したイノベーションの本質”を読んで。

本来の”イノベーション”は”技術進歩”とは違う。”イノベーション”は「非連続的な変化」であり「顧客の価値次元の転換」である。”イノベーション”は、従来と違った文脈に当てはめてみれば、言われてみれば当たり前のことで、なぜこれがいままでなかったのだろうというものである。

組織や外的な機会からではなく、一個人の内発的な思いつきからイノベーションは始まるものであり、技術革新の”できるか・できないか”ではなく、”思いつくか、思いつかないか”である。

大企業では実行前に、フォーマルな正当性を要求されるのでイノベーションのためのリソース投入ができにくい。経営システムをうんぬんする前に、内発的なアイディアやイマジネーションを豊かに持つ個人を自由にさせることが大切である。それができないのであれば、技術進歩に注力したほうがよい。
その点では、ベンチャーからイノベーティブな活動が起こっている事象は納得でき、大企業よりもスモールカンパニーに歩があると言える。

”イノベーション”というと”技術革新”とすぐに同一視してしまいがちだ。
特に製造業では技術”進歩”の大きなものが技術”革新”=”イノベーション”と捉える傾向が強い。
しかしながら、本来のイノベーションの意味、つまり、「非連続的な変化」であり「顧客の価値次元の転換」ということからすると、イノベーションには必ずしも高度な技術開発は必要ではないと言える。

イノベーションの例として、割賦販売とコンテナ輸送を考える。

割賦販売は、高額な品物を購入する際に代金を一度に支払らわず、分割して支払っていくことで、今現在十分な現金がなくとも購入することができるというものだ。農家が生産性を上げ収益を得るために高価な農業機械が必要な場合、高価な機械を一括で買うだけの資金が無ければ、そもそも生産性を上げることができない。それを割賦販売にすることで、収益を上げさせ、資金を回収していくができる。

コンテナ輸送は、規格の揃ったコンテナを用いることで、陸上輸送と海上輸送をシームレスに繋いでいる。コンテナ輸送以前は、さまざまな荷物をいかに効率よく積み卸しするかが船会社の中核能力であり、そのための技術革新に多大な投資が行われていた。船会社は既存のパラダイムの中で技術を磨いていたので、コンテナ輸送などという発想は浮かばなかった。

この2つの事例には、特別な技術革新は必要なく、思いつくか、つかないか、だけである。

”持続的なイノベーション”である技術革新は、組織能力を発揮し、さまざまな手法でリスクを回避しながら実現に近づけることは可能だ。しかし、本来のイノベーションである”破壊的なイノベーション”を生み出すためには、既存の組織とは別建ての組織を作り、既存の組織のローカルな文脈(組織構造、ルーチン、価値基準)から守らないといけない。

イノベーションを起こしやすくするためには、①顧客の声を聞かない、②技術進歩を追わない、③他社ベンチマークをしない、④コンセンサスを求めない、ことである。①~③は、どうしても既存の文脈上の延長になってしまい、技術進歩に軸足が移りがちになってしまう。④は、大企業等で、事を実行する前にフォーマルな正当性を求められるため、既存の価値観と反するかもしれないイノベーションのためにリソースが割かれることはないからだ。

組織としてコンセンサスを求める大企業からはイノベーションが生まれる可能性は極めて低い。この点では、よい意味でオーナー企業、社長の一声で、迅速に動ける中小企業に歩があると言える。中小企業は、もともと組織を運営する労力が少なくて済み、社員と社長との距離も近いため、大企業よりよりイノベーションが起こりやすい潜在的素質を備えているといえる。

本来のイノベーションは、なぜこれがいままでなかったのだろう、という、違った文脈に当てはめてみれば、言われてみれば当たり前のことであり、「思いつくか、思いつかないか」だ。
そのため、継続的に起こせるものではなく、組織や外的な機会から発生するものでもない。一個人の内発的な思いつきからイノベーションは始まるので、内発的なアイディアやイマジネーションを豊かに持つ個人を自由にさせることが大切だ。

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